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バイオセラピー(PFC-FD™)外来

バイオセラピー(PFC-FD™)外来

*バイオセラピーは保険診療ではなく自由診療の治療となります。 

毎週水曜日 15:00~16:00


バイオセラピー(PFC-FD™)外来開設の経緯

がんを乗り越えた患者さんの健康な生活維持を願って

骨や関節、筋肉と言った運動器機能低下は、がんの治療(放射線、化学療法、手術など)によって生じることがあり、がんが根治し治療が終了した後も患者さんの生活の質を低下させるだけでなく、健康寿命にも影響を与える可能性があります。
(日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトよりhttps://locomo-joa.jp)
健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことで、2016年の厚生労働省の調査によると、わが国における健康寿命と平均寿命の差は男性で約8年、女性で約13年あります。そのため、寝たきりや要介護状態を予防し、生活の質を維持し健康な人生を少しでも長くおくることができるように健康寿命を延長することが大きな課題です。
 (日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトよりhttps://locomo-joa.jp)
実際にがん患者さんの中には、がん治療後に治療の影響で運動器機能低下が継続する場合があり(がんロコモティブシンドローム)、そのために身体機能の低下や日常生活の制限を引き起こすことがあります。このような状態が続くと、大変ながん治療を乗り越えたにも関わらず、生活の質の低下や健康寿命の短縮につながる可能性があります。
  (日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトよりhttps://locomo-joa.jp/locomo_cancer/)
一方で、運動器の機能低下を予防・改善することで生活の質の向上や健康寿命の延長につながることが報告されており、結果的にがんの予後の改善につながることが知られています。運動器機能低下を予防する方法には、適度な運動やリハビリテーション、あるいは運動器の専門家である整形外科での診療などがあります。このような運動器機能の回復や維持に取り組むことは、生活の質の向上や健康寿命の延長につながることが知られており重要です。
 
当院では、既にがん患者さんの治療後の運動器機能低下予防・改善のため、リハビリテーションや整形外科的な診療はおこなっておりますが、現在の治療では改善できない運動器の症状というのがあるのも事実です。『いまの治療では良くならず、手術しかないが手術はしたくない』あるいは、『いまの治療でよくならないのであれば手術をしたいが有効な手術方法がない』といったこともあるかと思います。
運動器の病気に対する代表的な対処方法
(日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトよりhttps://locomo-joa.jp)
 
そこで当院では、「手術をしない保存治療(消炎鎮痛薬やヒアルロン酸注射)(保存療法)」と「手術治療」の間の新たな選択肢として、バイオセラピー(PFC-FD™療法)を開始致します。

PFC-FD™療法とは

PFC-FD™ *療法とは、血小板に含まれる成長因子を凝縮し、活性化させたものを痛みのある部位に注入するものです。この成長因子を注入することで、自己修復能力を高め、痛みや機能の改善を図ることができます。
また、【PFC-FD™療法】についてのより詳しい情報は下記リンクに掲載されていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
*PFC-FD™は、血小板の力を活用する治療法であり、血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存したものの商品名・サービス名となります。「PFC-FD」は、セルソース株式会社がPlatelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dryという造語の頭文字から名付けました。※PFC-FD™は、セルソース株式会社の提供する商標です。

PFC-FD™療法の歴史

PFC-FD™療法は、PRP (platelet rich plasma)療法をさらに進化させたもので、PRPは再生医療となりますが、PFC-FD™は再生医療であるPRPと同様の理論を用いていますが、サイトカイン療法に位置付けられています。そのため正確には、PFC-FD™は再生医療ではないため、バイオセラピーと呼ばれています。PFC-FD™のもととなっているPRPは、体の組織がダメージを受けたときに、体が本来持っている回復能力をうまく引き出して、その組織を治してあげる近年注目されている再生医療の一つです。再生医療が最初に注目されたのは、ノーベル医学賞を受賞された山中伸弥教授のiPS細胞からと思われます。ES細胞と合わせて多能性幹細胞と言われ、様々な臓器の再生を促す治療として研究が進められています。また、ゴルフのタイガー・ウッズ選手や、野球では大谷翔平選手や田中将大投手が怪我の改善に対してPRP療法を活用したことでも話題となりました行い、このように一流スポーツ選手や専門のメディカルスタッフも再生医療を信頼し、治療が行われています。PFC-FD™は、このような再生医療の理論を用いて、PRPよりも簡易な形で患者さんに治療を提供することを目指しています。

PFC-FD™療法の理論

  • 血小板は傷の修復を担当する血液成分の1つです。
  • 血小板成分を濃縮し、活性化した状態で患部に注入すると、注入された場所の自己修復力が活性化されます。
  • 自己修復力が活性化されると、血管が新しく作られたり、細胞が集まってきたり、足場と呼ばれる立体構造の基礎となるものが作られるなど、新しく組織を作るうえで必要なものが損傷部に集まります。
  • 集まった細胞や足場に対して、物理的な負荷(圧力をかける、伸縮させる、こするなど)を加えることで、その場所に必要な強度や物性を持った組織を作ります。

PFC-FD™療法の適応疾患

  • 変性疾患(変形性膝関節症やへバーデン結節など)
  • 炎症性疾患(上腕骨外側上顆炎、アキレス腱付着部炎、足底腱膜炎、腱鞘炎など)
  • 外傷(靭帯損傷、肉離れなど)

PFC-FD™療法のメリット

  • 安全性が高い 100%患者さんご自身の血小板から作られた治療法です。これにより、化学的な薬剤や合成物質を使用するよりも、より自然な治療法であることが期待でき、非常に安全で、副作用が少ないことが知られています。治療後、軽度の腫れや赤みが数日間続くことがありますが、これらの症状は通常数日で改善します。
  • 手技が比較的簡便で、入院の必要がない
  • 治療後から普段の生活が可能である
  • 手術と違い何度でも処置が可能である
  • PFC-FD™は手術のような根治的な治療法ではなく、対症療法の一つですが、現在の保存療法では十分な効果が得られず、また手術療法を選択できない患者さんにとって、手術と違い何度でも処置が可能です

PFC-FD™療法のデメリット

  • 注射部位の痛みや炎症を伴うことがあります
  • 自己修復力に依存するため、治療効果、効果の持続時間には個人差があります
  • 注射器を使用して治療することによる感染のリスクがある場合があります
  • 保険適用外の治療であり、費用は自己負担である。ただし手術と比較して入院も不要で負担も少なく総合的に考えると比較的経済的である場合もあります

PFC-FD™(PRP-FD)療法 治療の流れ

1.診察

まずは医師の診察を行い、PFC-FD™療法が適用されるかどうか、確認します。
もちろん保険適用の治療もありますので、患者さまに適切な治療のご提案をさせていただきます。

2.採血

PFC-FD™療法が適用となった場合、バイオセラピー外来にて、静脈より血液約50ml採取します。

3.PFC-FD™作成

特定細胞加工物製造許可という厚労省の認定を取得している施設に採取した血液を搬送し、PFC-FD™を作成します(約3週間)。
 

4.注射

3週間後ご来院いただき、PFC-FD™を注射します。その際、入院や手術は不要です。注射のみで完結します。

注意事項

  • 血液採取を行い、感染症検査(HIV・HBV・HCV・梅毒・HTLV-1)で陽性反応が出た方は、治療を受けていただくことはできません。その場合、血液検査費用(税込10,000円)のみご負担いただきますので、あらかじめご了承ください。
  • 現在、がん治療中の患者さんは、治療の適応外となる可能性があり、医師の慎重な判断が必要となります。
  • 血液の状態によっては、ごく稀に作製ができない場合もあり(輸送トラブル等)、その際には再度採血が必要となる可能性があります。

PFC-FD™療法 注射後の流れ

翌日から1週間:注射後、細胞が活性化・促進されるため、発赤や痛みを伴うことがありますが、その後自然消失していきます。
1週間から3週間:診察で経過を確認しながら、軽い運動などを進めて行きます。
スポーツなどの運動復帰:注射後、体の自然治癒過程を活性化させ、治癒・自己再生を促すため、部位にもよりますが運動復帰には最低1か月程度かかります。

PFC-FD™療法の効果

即効性はありませんが、1週間から6か月程度で組織の修復が起こり、炎症がおさまったり痛みが軽減したり効果が認められてきます。効果や持続時間については個人差がありますが、これまでの様々な報告を総合するとPFC-FD™療法を受けた60-70%の患者さんが疼痛の改善やQOL、ADL改善などの効果を認め、またその効果も1-2年間と長く続くことが報告されています。

PFC-FD™療法の副作用

作成したPFC-FD™(PRP-FD)療法を注射したあと、約2割~3割の方に2~3日ほど注射した場所の痛みと腫れが出ることがあります。この症状は数日で治まります。それ以外の大きな副作用は、2022年3月現在、報告されていません。副作用が非常に少ない理由として、患者さん自身の血液由来なので、アレルギーや炎症などを引き起こす成分はほぼ含まれていないことが理由とされています。手技も日常診療で保存療法として、おこなわれている関節注射や局所注射と変わらないことも理由です。例えば、保存療法の関節注射の副作用の中に感染がありますが、2022年の論文では308,773回の注射で5件(0.0016%)と報告されておりますので、日常診療で保存療法として、おこなわれている注射の副作用報告のデータを考えても非常に安全な治療と言えます。

PFC-FD™療法にかかる費用

安全性が確立され効果が出ているものの、最新治療であり保険診療として認められるほどの臨床データが少ないため、自費診療での提供になっております。
 
200,000円[税別](採血・検査費用含)

お悩みの方へ

当院では、患者様一人一人に合った医療を提供したいと考えており、その選択肢の一つとしてPFC-FD™療法を開始しました。慢性的な痛みで悩まれている方や、ヒアルロン酸注射などを続けても痛みの改善がない方など、お気軽にご相談ください。
 

相談窓口

栃木県立がんセンター骨軟部腫瘍・整形外科
〒320-0834 栃木県宇都宮市陽南4-9-13
TEL: 028-658-5151 (病院代表)

※メールでのお問い合わせもお受けしております
Mail: pfc-tcc@tochigi-cc.jp

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