特長
形成外科とは
形成外科は、先天的または後天的に何らかの原因で失われた形態・機能を再建する診療科です。
悪性腫瘍の治療において、組織の切除を行った結果、部位によっては体の形態や機能に障害をきたし日常生活・社会生活に影響を及ぼす可能性があります。手術を行い、形態、機能を再建することで、生活における質(QOL)を向上させることを目的としております。
当センター形成外科の特徴
2021年4月からは常勤1名、非常勤3名の体制で診療を行っております。 悪性腫瘍術後の形態の変化や機能障害、四肢の浮腫、傷跡等でお困りのことがありましたらいつでもご相談ください。 当院では特にリンパ浮腫・乳房再建の診療に力を注いでおります。
他院からの受診を希望される際は形成外科外来宛て(月・水午前)の紹介状を持参してください。
リンパ浮腫
リンパ浮腫とは
体にたまった老廃物を運搬するリンパ管の機能が低下し、四肢を中心にむくみ(浮腫)が生じた状態がリンパ浮腫です。婦人科系の悪性腫瘍や乳がんの手術時にリンパ節が切除され、リンパ管の機能低下が生じて発症します。また、放射線・化学療法も機能低下の原因となります。
リンパ浮腫の症状
リンパ浮腫は、術後すぐに生じる場合もあれば、5~10年経過して発症する場合もあります。リンパ浮腫を発症すると浮腫に加えて炎症を起こしやすくなり、生活の質(QOL)が損なわれる原因になります。
リンパ浮腫の診断
病歴や診察所見から診断は可能です。
他の静脈性浮腫等との鑑別を行う場合、当院ではリンパシンチグラフィーやインドシアニングリーン(ICG)を使用したICG蛍光リンパ管造影検査を行っています。
リンパシンチグラフィー(毎週水曜日・隔週金曜日)
アイソトープによる管造影(リンパシンチグラフィー)ではリンパ流をダイナミックに捉えることが可能であり、病期診断や手術適応の有無・治療効果の判断に有用な検査です。完全予約制のため希望される方は、まずは形成外科外来を受診してください(月・水)。
15分(early phase) | 60分(late phase) |
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図:リンパシンチグラフィー 右下肢続発性リンパ浮腫
右下腿リンパ液の皮下への漏出を認める
ICGリンパ管蛍光造影検査
ICGリンパ管蛍光造影検査では、近赤外線カメラでリアルタイムにリンパの流れを可視化できるため、診断や治療方針の決定、手術を行う際に有用です(リンパ浮腫検査外来:別項を参照)。
下肢健常者 | 下肢リンパ浮腫 |
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図:ICGリンパ管蛍光造影検査
リンパ浮腫ではリンパ液の皮下への漏出を認める
リンパ浮腫の治療
リンパ浮腫の治療は大きく保存的治療(理学療法)と、外科的治療(手術療法)の二つに分けられます。理学療法には用手的リンパドレナージ(マッサージ)、弾性包帯やストッキングによる圧迫、運動療法などがあります。
当院では希望される方にはリンパ浮腫ケア外来を受診していただき、理学療法を導入しています。
手術はリンパ管静脈吻合術を行っています。リンパ管と静脈を縫い合わせて、バイパスを作製することでリンパを静脈内へ還流させ、リンパ流に変化をもたらすことができます。
手術単独での効果も期待できますが、理学療法との併用がより効果が高まると考えられています。当院では入院で局所麻酔下に手術を行っています。
乳房再建
乳房再建とは
乳房再建とは、乳癌手術などで失われた乳房を手術で再建することです。できるだけ左右対称で自然な形の乳房を再建することを目的に治療を行います。
乳房再建の時期
乳房再建の手術時期は一次(乳癌手術と同時に乳房再建)と二次(乳癌手術の一定期間後に乳房再建)に分けられて、乳房再建の手術回数は一期(1回の手術での乳房再建)と二期(2回の手術での乳房再建)に分けられます。 これらの組み合わせにより、乳房再建の手術時期と手術回数を決定します。 当院では主に一次二期再建・二次一期再建・二次二期再建を行っております。
乳房再建の方法
乳房再建には大きく分けて自家組織で行う方法と、人工物(シリコンインプラント)で行う方法があり、それぞれ利点と欠点があります。
- 人工物(シリコンインプラント)による再建も再開しております。
自家組織による再建
背中の組織を用いる広背筋皮弁と、下腹部の組織を用いる腹部皮弁が主に用いられます。
「乳房再建手術」は、すべての乳癌患者さんに与えられた選択肢です。
お気軽にご相談ください。
担当疾患
- 悪性腫瘍切除後の再建
- 乳房再建(乳癌術後)
- リンパ浮腫(子宮、卵巣、乳癌術後など)
- 各種難治性潰瘍(VAC療法、Mohsペーストなど)
- 手術後の傷跡
常勤医師

形成外科 医師
長島 隼人
ながしま はやと