がんは遺伝子の異常によって起きる疾患ですが、若年発症、多重多発がん、特定のがんが家系内に多発するなどの特徴を示す場合に遺伝が関係する場合があります。特に、大腸がん、乳がん、子宮体がん、卵巣がん、内分泌腺腫瘍（甲状腺、副腎褐色細胞腫、副腎皮質がん、副甲状腺、膵内分泌腫瘍、下垂体腺腫）、骨軟部腫瘍（骨肉腫等）、網膜芽細胞腫等の疾患では遺伝性のがんが比較的多く認められます。
　栃木県立がんセンターでは2000年に研究所を設立し、がんの遺伝と予防に関する診療と研究を続けてきました。現在までに100種類以上の原因遺伝子が報告されていて、遺伝子検査により様々な遺伝性腫瘍の診断が可能です。
　がん予防・遺伝カウンセリング外来では、ご自身やご家族のがんの遺伝について不安を持つ方に対する遺伝カウンセリングと遺伝子検査を行っています。

　がんは日本人の二人に一人が罹患する一般的な病気ですが、5-10％の症例に特定の遺伝子の生まれつきの異常が原因で起きる遺伝性のがんが認められます。がん予防・遺伝カウンセリング外来では、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー、看護師（遺伝性腫瘍コーディネーター）等が患者様の不安や心配に対して、病歴や家族歴等に基づき遺伝的なリスクを評価する遺伝カウンセリングを実施しています。
　遺伝カウンセリングの結果予測されるリスクに応じて、患者様とご家族のがんの早期発見や予防のための検査の実施など様々な対処法をアドバイスしています。一回のカウンセリングには１時間から１時間半程度かかりますので、すべて予約制となっています。自費診療で行われる一部の遺伝子検査を除き、遺伝カウンセリングは保険診療で行われます。

　がん予防・遺伝カウンセリング外来で行われる遺伝子検査は、下記の内容に分けられます。

⑴ 遺伝性乳がん卵巣がん、リンチ症候群、多発性内分泌腫瘍症などが疑われている方を対象として保険診療で実施している遺伝子検査（例　マイクロサテライト不安定性検査、ミスマッチ修復遺伝子に対する免疫染色検査、BRCA1/2、MEN1、RETなどの遺伝学的検査）

⑵ 保険診療で陽性と判定された場合の未発症血縁者の遺伝子検査は、検査会社に発注する自費の検査になります（例　血縁者の遺伝学的検査）。

⑶ 本人ががんを発症していて、保険適応外の遺伝子検査の適応と考えられる場合には検査会社に発注する自費の検査をご紹介しています。

⑷ 臨床研究として実施している無料の遺伝子検査については、他院をご紹介して検査を受けて頂く場合があります。