研究課題

研究課題のご案内

 ペプチドミクスは、細胞や組織に見出される分子量1万未満のペプチドを包括的に調べる研究分野です。分子量1万未満の領域は電気泳動で調べにくい大きさですが、細胞間の調節因子として働くペプチドホルモンや抗菌ペプチドなどが含まれています。質量分析法の発達にも関わらず、この分子量の領域はその実態がよくわかっていませんでした。
 当プロジェクトでは、この領域を調べることによって、分泌タンパク質や膜タンパク質のプロセシング部位を明らかにできることを提唱しています。タンパク質のプロセシングとは、特定の酵素が働いてタンパク質を特定の位置で切断することです。分解的な切断とは異なる意味をもっています。プロセシングによって、生理活性を持つ分子がタンパク質の内側から切り出されたり、リガンドを捕捉する可溶型受容体が生じます。プロセシングの場所は、配列だけではなく、糖鎖などの修飾によっても影響を受けるので、コンピューターでの予測はおのずと限界があり、実際の配列を調べることで初めて明らかになります。特定できたプロセシング部位は、診断や治療の新しいターゲットを見出すための有用な情報となります。実際に、これまでに新しいヒトの生理活性ペプチド7種類を見出し、新規ペプチドの探索に質量分析を応用した世界初の事例となっています。がん細胞で発現する分泌タンパク質と膜タンパク質の切断部位の特定を進めて、がんの診断や治療に役立つ手がかりを見出す研究を進めています。