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形成外科

特長

形成外科とは

形成外科は、先天的または後天的に何らかの原因で失われた形態・機能を再建する診療科です。悪性腫瘍の治療において、組織の切除を行った結果、部位によっては体の形態や機能に障害をきたし日常生活・社会生活に影響を及ぼす可能性があります。手術を行い、形態、機能を再建することで、生活における質(QOL)を向上させることを目的としております。

当センター形成外科の特徴

2024年4月からは常勤1名、非常勤1名の体制で診療を行っております。 悪性腫瘍術後の形態の変化や機能障害、四肢の浮腫、傷跡等でお困りのことがありましたらいつでもご相談ください。当院では特に乳房再建・リンパ浮腫の診療に力を注いでおります。
他院からの受診を希望される際は形成外科外来宛て(月・水午前)の紹介状を持参してください。

乳房再建について

当院は「一次一期再建」「一次二期再建」「二次再建」のすべてに対応し、患者さん一人ひとりに適した再建方法をご提案しています。初回の手術から再建を行いたい方、過去に切除を受けた方も、ぜひご相談ください。

リンパ浮腫について

当院では、乳がんや婦人科がんの治療後に発症するリンパ浮腫に対し、専門的な診断から保存的治療(理学療法)・外科的治療(リンパ管静脈吻合術)まで幅広く対応しています。早期のご相談・継続的なケアが、QOL維持につながります。

担当疾患

乳房再建

乳房再建をお考えの方へ

~当院は「一次一期再建」「一次二期再建」「二次再建」すべてに対応しています~

乳がんの治療において、「乳房を失うこと」は外見の変化だけでなく、心理的なダメージや生活の質(QOL)の低下にもつながることがあります。当院では、患者さんが前向きに治療と生活を送れるように、乳房再建手術の選択肢をご用意しています。

当院で対応している再建方法

  • 一次一期再建(乳房切除と同時に再建)
乳房切除と同時に再建を行う方法です。手術が一度で済むため、身体的・精神的な負担を軽減できるのが大きな特長です。当院ではこの方法を新たに導入し、形成外科医と乳腺外科医が連携して、術前から再建の可能性についてご説明しています。
 
  • 一次二期再建(エキスパンダーを用いた段階的再建)
従来通り、乳房切除と同時にエキスパンダー(組織拡張器)を挿入し、一定期間後に本格的な再建を行う方法も継続しています。すべての方が一次一期再建の対象になるわけではなく、がんの進行度や術後の治療方針に応じて、より適切な方法を一緒に選んでいきます。
 
  • 二次再建(過去に乳房切除を受けた方)
当院または他院で乳房切除を受けた方で、「やはり再建をしてみたい」と思われた場合も、二次再建(術後再建)が可能です。乳房再建は手術直後に限らず、あとからでも行えます。

当院で採用している主な再建方法

  • インプラント
  • 腹部の皮膚と脂肪を使った再建(腹部穿通枝皮弁(DIEP)法)
  • 背中の筋肉と皮膚を使った再建(広背筋皮弁法)

まずは「相談だけ」でも大丈夫です

「再建って何をするの?」「私は対象になる?」「費用や時期は?」など、疑問や不安を抱える方も多くいらっしゃいます。
再建をするかどうかを決めるのは、正しい情報を知った上でじっくり考えてからで大丈夫です。
当院の形成外科外来では、乳房再建に関心のある方のご相談を随時受け付けています。
他院で手術をされた方も、まずはお気軽にご相談ください。

リンパ浮腫

リンパ浮腫とは

 体にたまった老廃物を運搬するリンパ管の機能が低下し、四肢を中心にむくみ(浮腫)が生じた状態がリンパ浮腫です。婦人科系の悪性腫瘍や乳がんの手術時にリンパ節が切除され、リンパ管の機能低下が生じて発症します。また、放射線・化学療法も機能低下の原因となります。

リンパ浮腫の症状

リンパ浮腫は、術後すぐに生じる場合もあれば、5~10年経過して発症する場合もあります。リンパ浮腫を発症すると浮腫に加えて炎症を起こしやすくなり、生活の質(QOL)が損なわれる原因になります。

リンパ浮腫の診断

病歴や診察所見から診断は可能です。他の静脈性浮腫等との鑑別を行う場合、当院ではリンパシンチグラフィーやインドシアニングリーン(ICG)を使用したICG蛍光リンパ管造影検査を行っています。

リンパシンチグラフィー(毎週水曜日・隔週金曜日)

アイソトープによる管造影(リンパシンチグラフィー)ではリンパ流をダイナミックに捉えることが可能であり、病期診断や手術適応の有無・治療効果の判断に有用な検査です。完全予約制のため希望される方は、まずは形成外科外来を受診してください(月・水)。
15分(early phase) 60分(late phase)
リンパシンチグラフィー写真
リンパシンチグラフィー写真 

図:リンパシンチグラフィー 右下肢続発性リンパ浮腫
右下腿リンパ液の皮下への漏出を認める

ICGリンパ管蛍光造影検査

ICGリンパ管蛍光造影検査では、近赤外線カメラでリアルタイムにリンパの流れを可視化できるため、診断や治療方針の決定、手術を行う際に有用です(リンパ浮腫検査外来:別項を参照)。
下肢健常者 下肢リンパ浮腫
 ICGリンパ管蛍光造影検査 ICGリンパ管蛍光造影検査2 

図:ICGリンパ管蛍光造影検査
リンパ浮腫ではリンパ液の皮下への漏出を認める

リンパ浮腫の治療

リンパ浮腫の治療は大きく保存的治療(理学療法)と、外科的治療(手術療法)の二つに分けられます。理学療法には用手的リンパドレナージ(マッサージ)、弾性包帯やストッキングによる圧迫、運動療法などがあります。
当院では希望される方にはリンパ浮腫ケア外来を受診していただき、理学療法を導入しています。
手術はリンパ管静脈吻合術を行っています。リンパ管と静脈を縫い合わせて、バイパスを作製することでリンパを静脈内へ還流させ、リンパ流に変化をもたらすことができます。
手術単独での効果も期待できますが、理学療法との併用がより効果が高まると考えられています。当院では入院で局所麻酔下に手術を行っています。

常勤医師

形成外科 医師  長島 隼人

形成外科 医長

長島 隼人

ながしま はやと

専門分野・実績

慶應義塾大学卒 医学博士

認定資格

日本形成外科学会 専門医
日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 乳房インプラント・エキスパンダー責任医師
日本医療リンパドレナージ協会 医師対象理論講習会 修了
日本静脈学会 弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター